これは、『子どもの睡眠が危ない』(クローズアップ現代/NHK番組)で、一躍注目を浴びるようになりました。
番組の紹介では="ショッピングセンターやレジャー施設など深夜に活動できる場所が増え、ますます親の生活が深夜化する中で、急速に進む「子どもの夜型化」。単に寝不足を引き起こすばかりでなく、最近増えてきたとされる「きれる子ども」「不登校児」と睡眠時間の短縮、夜更かしで起きる生活サイクルの乱れが関係していることが、最新の研究であきらかになってきた"=と、あります。
コンビニや外食産業の発展により夜遅くまで外食が可能となり、22時以降のファミリーレストランでも幼児を連れた家族をよく見かけるようになりました。
私達大人にとってはさほど問題ない夜遅い食事ですが(ダイエットを気にする人にとっては大きな問題!→ 22時以降の摂取カロリーはダイレクトに蓄積されます!)、もし、子どもも一緒になって夜遅い食事となると? しかも、たまにではなくしょっちゅうともなると、、、、、これは大きな問題です。
子どもが太るから? 夜型の子どもになるから? 寝付きが悪くなるから???
いえいえ、もっと重大な事です。
大人の生活リズムに合わせた社会環境は、子どもの睡眠に大きく影響を与え、その結果「睡眠障害」を引き起こし、ひいては、すぐキレる子、自閉症の子、知能の低下等、脳の発達障害にもつながりかねないからです。
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就寝時間が遅くなっても起きる時間が遅ければ良いでしょう、と思われる方もいるかもしれません。しかし、残念ながら子どもにとっての睡眠は時間量だけではなく、睡眠そのものの「質」がとても重要になってきます。その質とは、夜早く(遅くとも21時位)に真っ暗な中で寝て、朝は太陽の光で自然と目が覚めると言った規則正しい生活リズムによる睡眠です。
人は、本来25時間周期の生体リズムを持っています。しかし、地球の自転リズムに合わせるために、太陽の光で24時間周期に強制的に同期させられてしまいます。つまり、太陽の光でリセットされて24時間となるわけです。
この24時間周期の人の生体リズムを「サーカディアン・リズム」と呼びます。私たち人類は、このリズムの中で生活をしていくようにメカニズムされています。
人が夜になると眠くなり、朝になると自然と目が覚めるという1日周期の生体リズムをコントロールする重要な物質が、「メラトニン」という脳内ホルモンです。このメラトニンは、夜に働くホルモンで、分泌されると体温を下げ、眠気をおこさせ、ぐっすりと眠るのに一役買っています。そして明け方に向かってメラトニンの分泌が減少していき、朝の光を浴びて爽快に目が覚めるわけです。ただ、たとえ夜であっても、光にあたるとメラトニンの分泌は抑えられてしまいます。ですから、不規則な生活環境は、これが原因となって、寝付きが悪くなったり眠りが浅くなるといった睡眠障害になってしまうわけです。
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人は当たり前に、太陽の光で目が覚めるようにできています。日中は太陽の光をサンサンとたくさん浴びてしっかりと覚醒(起きること)する、夜は電気を消して真っ暗い中で充分に睡眠(寝ること)をとる、こうした外部環境からの自然な刺激により、「睡眠覚醒リズム」は作られていきます。
(ですから、大人の生活リズムに合わせた社会環境を、子どもに与えるのは問題になるわけです。)
ここで重要なことは、生後4ヶ月位までにはサーカディアン・リズムが作られて24時間周期で生活していくようになり、4〜5歳位にかけて「睡眠覚醒リズム」が完成されていくと言うことです。だからこの時期、子どもにとっては、早寝・早起きのリズムがとても大切なことになるわけです。
しかも、この時期に合わせて幼児「脳」は爆発的に成長していきます。
では、この「睡眠覚醒リズム」が作られないと何故いけないのでしょう?
それは、睡眠の「質」が悪くなってしまうからです。その結果、幼児「脳」が正常に発育しない、と言う危機に見舞われてしまいます。
質の高い睡眠とは、夜21時には就寝し〜朝6時位には起床すると言う、ちゃんとした睡眠覚醒リズムのもと、正しい「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が形成されることで、脳が正常に発育していくことを意味します。
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人は、そもそも生まれたての頃は、レム睡眠やノンレム睡眠と言うパターンは出来上がっていません。
胎児の前半は、まずレム睡眠の原型が現れて常にレム期となります。その後にノンレム睡眠の原型が現れますが、胎児の場合はレム中心の睡眠となります。そして、出生後に外界の刺激=太陽の光や母親など周囲の人の刺激によって、覚醒状態が出現するようになりノンレム睡眠が多くなります。
生まれたての新生児ではレム睡眠は50%でノンレム睡眠と半々ですが、3ヶ月後には40%、6ヶ月後には30%とレム睡眠は急激に減少して、その後6歳位までゆ〜くりと20%の成人並の量まで減少を続けます。この頃にはレム/ノンレム睡眠が90分単位の周期でくり返される、「睡眠サイクル」と言う睡眠の基本パターンが出来上がっていきます。
ここで大切なことは、レム睡眠の減少→ノンレム睡眠の増加には、脳の発育と密接な関係があると言うことです。
レム睡眠の比率は脳が未熟なほど多いことから、ノンレム睡眠の増加が脳の発育には重要であると言われています。
生後4ヶ月頃になるとサーカディアン・リズムが出来て、体内時計が昼夜のリズムに合わせるように夜に連続した睡眠が続くようになります。
それまで、ダラダラと睡眠していたのが、昼間の睡眠が減少し、夜間に長い睡眠が集中されてきます。つまり、昼寝がおまけの睡眠になるわけです。
このサーカディアン・リズムに合わせるように、生後4ヶ月頃には成長ホルモンの分泌が睡眠中に集中して分泌されるようになります。とくに睡眠覚醒リズムが完成する4〜5歳位までにかけて睡眠中に多量の成長ホルモンが分泌されます。
これは、起きている時にはあまり分泌されませんが、睡眠中=特に、ノンレム睡眠時の深い眠りの時に分泌が促進されるのです。
この「成長ホルモン」は、なにも背を伸ばすだけに必要なモノではありません。幼児期においては、身体の各種組織の発育にはなくてはならないホルモンで、脳の発育にもとても重要な働きをします。そして、4〜5歳頃になると成人並にまで減少してしまい、以後、成長期が過ぎても成長ホルモンの量はあまり変わりません。
このように幼児期における規則正しい生活は、質の高い睡眠をもたらし、正しい「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が形成されることで、脳が正常に発育していくことにつながるわけです。
ところが、この睡眠覚醒リズムがうまく形成されないと、ドーパミン神経系やセロトニン神経系といった重要な脳内ホルモンの伝達系の発達に支障をきたします。
ドーパミン(既出)は、子どものやる気を促進させるのに一役買い、人間らしさ脳=前頭連合野を豊かに発達させる重要なものです。
セロトニンは、とくに情動をコントロールするのにとても重要な役割を果たします。親子関係や社会性といった人が生きていく上で大切な、環境適応能力に関係しています。
情緒不安定、攻撃的、自己主張が強い、キレやすい、といった問題行動を起こしやすい子は、このセロトニン神経系の未発達にあると言われています。
さらに、「△」「□」「\」「+」などの図形の模写(=認知能力)なども正しく出来ないなどが報告されています。
人間にとって重要な脳内ホルモンの生成や伝達経路に支障が出てくるわけですから、幼児期に正しい睡眠覚醒リズムを作ることが如何に重要かがわかります。
人は、猿並の脳の大きさで生まれてきますが(第2回参照)、その後に飛躍的に脳を発達させなくてはならない! と言う宿命があります。
そのために人類は、3歳で成人の約60%、6歳で成人の約90%まで爆発的に脳が大きくなりますが、細部に渡ってはまだまだ未熟です。
発育段階に応じて、脳のメカニズムを完成させなくていかなければなりません。そのために、適切な幼児教育&幼児環境が必要なのは以前にも述べましたが、その土台となる「脳そのもの」が、その子どもの睡眠環境により大きく影響を受けることを理解していただきたいと思います。
「寝る子は育つ」と言う格言があるように、「睡眠」と「質」の関係はとても重要です。
さて、今回は最近話題の「幼児"脳"があぶない」にからんで、3つの脅威として「環境ホルモン」、「微細脳障害(MBD)」/「早幼児期脳障害」、「睡眠障害」を取り上げました。
これらは、社会要因の変化や劣悪化が、子どもの脳の発達に支障をきたし、知能、情動、社会性といった様々な面で影響を与えています。
幼児期は長い人生のほんのひととき(1割未満=人生80年として6歳まで)に過ぎませんが、その結果がその子の人生に大きく影響を与えるわけですから、大切に&真剣に、そして何よりも愛情を持って育ててください。
(今回の一連のテーマ、幼児「脳」があぶない! 3つの要因である「環境ホルモン」、「微細脳障害(MBD)」/「早幼児期脳障害」、「睡眠障害」について、この解説のコーナーは以上です。)
さて、前回同様に引き続き、るりる〜先生と吉木先生とで「幼児教育と環境 〜才能開花は先天的か後天的か???」について対談を進めていただきたいと思います。
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