カオスは非常に複雑かつ不規則 な波形を持つ振動です。 偶然的な要因を含まない(=確率的な要素を持たない) 非線形動的システムの多くに、この現象が発生することが知られています。
この振動の乱雑さは、システムの動作が簡単な数式で記述される場合でさえ、 「コイン・トスの繰り返し」のような確率的な現象に匹敵します。左下の図は、 カオスを発生する数式モデルとして有名なローレンツ方程式からの波形です:
カオスは電気工学・機械工学をはじめ、 船舶工学・生物学・経済学など様々な分野で観測され注目されています。 右上の図は、ダイオード1つを含むある発振回路に発生するカオスの例です。 横軸・縦軸共に0.5v/divで観測しています。
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多くのの工学分野において、カオスは「邪魔者」でありその除去が望まれます。 そのためカオスや関連した現象の分類・その発生メカニズムの解明が、 広い分野にまたがるカオスの研究に共通する問題となっています。
電気回路は、 動作を記述する方程式の簡潔さ・現象の観察の容易さ・物理的実現の容易さなど、 好ましい特徴を併せ持つ実物理システムとして位置づけられます。 そのため様々な分野の研究者が、 カオスに対する理論的考察の出発点となる例題として、 電気回路に注目しています。
これを受けて本教官を含む研究グループは、 カオス発生回路の理論的考察を通して、 多くの分野で横断的に議論されていた以下の3つのテーマに対し、 基礎的かつ重要な知見を与えました:
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- 高次元カオス発生回路の解析
カオスの発生には、システムの動作を記述する上で 本質的な変数(=次元)が少なくとも3個必要です。 この変数が4個以上ある回路を高次元カオス発生回路と呼びます。
高次元の回路では、3次元の回路にはない特有の現象が発生します。 その代表例が通常のカオスよりも乱雑な振動、ハイパーカオスです。 我々は数種類のハイパーカオスや、関連する現象を解析し分類しました。
例: K. Mitsubori & T. Saito, A Four Dimensional Plus Hysteresis Chaos Generator, IEEE Trans. CAS-I-41, 12, pp.782-789 (1994).
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カオスを発生するシステムにある種の状態フィードバックを適用すると、カオスを安定化して単純な周期振動へと移行させることができます。この技術はしばしば「カオスの制御」と呼ばれ、システムの構造を大きく変えずにカオスを取り除く技術として注目されています。
我々は新しい安定化手法を提案し、安定化の厳密な保証とその限界の見積もり・安定化されたUPOのロバスト性の評価などを行いました。
例: K. Mitsubori & T. Saito, Control of Piecewise Linear Chaos by Occasional Proportional Feedback, Nonlinear Dynamics: New Theoretical and Applied Results (J. Awrejcewicz ed.), Akademie Verlag, pp.361-375, (1995).
複数のシステムが互いに結合された場合、各システムがカオスを発生しながらも、互いに対応する状態が各時刻で等しくなることがあります。この現象はカオスの同期と呼ばれ、現象自体の興味深さ・秘匿通信への応用の可能性などの点で注目されています。
我々はあるカオス発生回路から数種類の結合システムを構成し、これらに発生するカオスの同期のメカニズムを理論的に説明しました。
なお各テーマにおける主な現象の発生は、 実装回路を用いた実験で確認されています。
また本教官は、 電気回路以外のシステムにもカオスの制御の適用を試みています。 以下の論文では、波浪中で浸水した船に発生するカオス的な横揺れの安定化 について報告しています:
K. Mitsubori & K. Aihara, Delayed-feedback Control of Chaotic Roll Motion of A Flooded Ship in Waves, Proc. R. Soc. London A, vol.458, pp.2801-2813, (2002).このカオス的横揺れは、 船体の横揺れと滞留した水の横揺れの相互作用が作る連成振動であり、 高次元カオスの一種と位置づけられます。 その運動方程式にカオスの安定化手法を適用した結果、 複雑な振動パターンと大きな振幅を持つカオス的横揺れが、 シンプルな振動パターンと小さな振幅を持つ周期的横揺れに 抑制されることが明らかになりました。
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